
【S】―エス―01
第34章 夢の断片
赤いペンで×印をつける手の動きも止まった咲羅は、地図から半歩後方へ体を離し、小首を傾げる。
「……あれ? この曲、どこで聞いたんだっけ?」
下唇に人差し指を当て茶色い髪の奥で視線を游がせ、しばしの間、いつどこでその曲を聞いたのか思い出そうとする。
だが結局それは叶わず、やがて口角をつり上げ緩めた唇からぽつり一言。
「まぁいいや」
口元に当てていた手を下ろし、再び後ろ手に組む。
何か大切なことがそこにある気はしたが、思い出せないのなら所詮その程度のことなのだろう。
その程度の記憶に興味関心を持てなくなった咲羅は、それ以上考えることをやめた。
「世界、か……」
広間には、渓谷に流れる川のせせらぎに混じり、咲羅の口ずさむ鼻歌と掛け時計の時を刻む音だけが響く。
「……あれ? この曲、どこで聞いたんだっけ?」
下唇に人差し指を当て茶色い髪の奥で視線を游がせ、しばしの間、いつどこでその曲を聞いたのか思い出そうとする。
だが結局それは叶わず、やがて口角をつり上げ緩めた唇からぽつり一言。
「まぁいいや」
口元に当てていた手を下ろし、再び後ろ手に組む。
何か大切なことがそこにある気はしたが、思い出せないのなら所詮その程度のことなのだろう。
その程度の記憶に興味関心を持てなくなった咲羅は、それ以上考えることをやめた。
「世界、か……」
広間には、渓谷に流れる川のせせらぎに混じり、咲羅の口ずさむ鼻歌と掛け時計の時を刻む音だけが響く。
