
【S】―エス―01
第35章 綻び
その答えは、目を伏せわずかに笑みを溢す男の口より明らかになった。
「ああ養子だがね。あまり喋らないんだ」
そう言い彼女の養父である彼は、まだ半分ほど中身の入ったカップに触れる。
(なるほど……)
つられてテーブルの上に置かれたカップを右手で取り口をつけ、再び折れた話の腰を戻す。左手首の腕時計に、多少の違和感を覚えながら。
「【計画】についてですが、日本とのパイプはすでにできてますし、このまま進めても問題ないでしょう」
ハロルドは腕時計を邪魔くさく右手で弄った後に膝の上で両手を組み合わせ、淡々と、事もなげに言う。
その頃には、左手首の違和感も消え去っていた。
「確かに。サンプルも手に入れた、計画も順調だ。だが、私が言いたいのは君が――」
そう言いかけたところで男は、はたと言葉を呑み込む。
「なんです?」
眼鏡の奥で、すうっと光の消えたハロルドの碧眼が見据える。彼はなんのことか分かっていながら、あえて言及したのだ。
「ああ養子だがね。あまり喋らないんだ」
そう言い彼女の養父である彼は、まだ半分ほど中身の入ったカップに触れる。
(なるほど……)
つられてテーブルの上に置かれたカップを右手で取り口をつけ、再び折れた話の腰を戻す。左手首の腕時計に、多少の違和感を覚えながら。
「【計画】についてですが、日本とのパイプはすでにできてますし、このまま進めても問題ないでしょう」
ハロルドは腕時計を邪魔くさく右手で弄った後に膝の上で両手を組み合わせ、淡々と、事もなげに言う。
その頃には、左手首の違和感も消え去っていた。
「確かに。サンプルも手に入れた、計画も順調だ。だが、私が言いたいのは君が――」
そう言いかけたところで男は、はたと言葉を呑み込む。
「なんです?」
眼鏡の奥で、すうっと光の消えたハロルドの碧眼が見据える。彼はなんのことか分かっていながら、あえて言及したのだ。
