
【S】―エス―01
第35章 綻び
部屋を出ると丁度すれ違いに眼前をリンが掠め、通り過ぎようとしていた。
その表情は何か考えを巡らせているようにも窺えたが、今の彼にとってそんなことどうでもよかった。
S‐145、つまり咲羅が再び目覚めてから計画は少しずつ狂い始め、生じた苛立ち。その矛先は――、
「リン!」
――彼女に向かった。
ハロルドは青い双眸でリンを視界に捉え、つかつかと歩み寄る。
「っ! ――ハロルド」
振り返りその姿を確認して、リンはこれ以上ないほどに目を見開く。
彼女も、恐らくなんのことか察しているのだろう。呼び止められたリンは彼の様子が違うことに警戒し、距離を空ける。
「ひとつ訊きたい」
だがハロルドはそんなことなどお構いなしだ。苛立ちに満ちた表情でリンを見据え、ひとつ言葉を投げかけると、じりじりとその距離を詰めてゆく。
壁づたいに後ずさる彼女の背後には、部屋の入り口がぽっかりと縦長の口を開け待ち構えていた。
その表情は何か考えを巡らせているようにも窺えたが、今の彼にとってそんなことどうでもよかった。
S‐145、つまり咲羅が再び目覚めてから計画は少しずつ狂い始め、生じた苛立ち。その矛先は――、
「リン!」
――彼女に向かった。
ハロルドは青い双眸でリンを視界に捉え、つかつかと歩み寄る。
「っ! ――ハロルド」
振り返りその姿を確認して、リンはこれ以上ないほどに目を見開く。
彼女も、恐らくなんのことか察しているのだろう。呼び止められたリンは彼の様子が違うことに警戒し、距離を空ける。
「ひとつ訊きたい」
だがハロルドはそんなことなどお構いなしだ。苛立ちに満ちた表情でリンを見据え、ひとつ言葉を投げかけると、じりじりとその距離を詰めてゆく。
壁づたいに後ずさる彼女の背後には、部屋の入り口がぽっかりと縦長の口を開け待ち構えていた。
