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【S】―エス―01

第5章 接触

 ◇1


 ――201X年 5月5日。


 最初の事件が発生してから、すでに1ヶ月が経過していた。


 ゴールデンウィークも最終日を迎えたその日、警察署内の一室に香緒里の声が響く。


「何故ですか!?」


 突然下された本部からの判断に、香緒里は酷く憤(いきどお)っていた。


「香緒里さん、まあ落ち着いて……」


 そう言って1歩後ろからやや控えめになだめるのは、香緒里の同僚であり3歳年下の山田 裕也(やまだ ゆうや)。


「山田、あんたは黙れ!」


 自分とあまり変わらない背丈の彼の頭をぺしゃりと小突く。


「いてっ!」


 心なしか涙目になりながら、叩かれた頭部を撫でる山田。それを尻目に香緒里は、目の前の上司にあたるであろう男へ歩み寄り声を荒らげる。


「納得できません!」


 左手で感情任せに傍らにあったデスクを叩く。「だって……」続けようとした時、それを説き伏せるかの如く割って入る。


「諦めろ。俺たちは上の命令に従って動く駒にしかすぎないんだよ」


 香緒里の上司にあたる50代後半くらいのその男は、苦虫を噛み潰したような顔でそう言った。
 

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