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【S】―エス―01

第36章 決行

 

『――計画について、このまま進めるにはいくつか問題点がある』


 聞こえてきたのは、東雲 暁の声だ。


『……問題点?』


 次いで訝しげに問う30代半ばくらいの男の声。


 非常に流暢な日本語であるが、やはり言葉の端々に多少の訛りがある。この声の主こそが、恐らくハロルドなのだろう。


『彼らが記憶や意識を共有化し、思念でやり取りをすることは確認済みです。ただ――』


『個体の暴走――ですね?』


 言い澱んだ東雲 暁の声に、また別の4、50代とおぼしき日本人男性の声が横から割って入る。


『…………』


 言葉を肯定するかの如く会話が途切れ、しばしの沈黙が続く。


 その程度のこと、とばかりにハロルドだろう人物からふっと空気の抜ける笑みが漏れ聞こえ、


『――その点についても対処法は打ってあります。まだ試作段階ですがね……』


 何やらテーブルの上に置き、カチッと開ける音がした。


『……これを。この中には、個体を把握し管理する為の追跡装置も備わっています』


(追跡装置……? そっか、だから居場所が分かったんだ!)
 

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