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【S】―エス―01

第37章 傀儡

 ◇1


 一方の刹那は――。


 先ほどから後をついて来る気配がある。それと同時に感じるひとつの視線。


 しかしその気配は、瞬矢たちのものとは違い、常に後方から鋭利な視線を送り続けてきた。


 鋭く冷たいが、どこか覚えのある視線。


 後方を見やり一瞬窺えた、小柄でフードつきのレインコートのようなものを着た人影。


(まさか……)


 身を翻し振り返ろうとしたその時、すでにそこに気配はなく、次に同じ視線を感じたのは後方からであった。


「――動くな」


 正体が分かったところで時すでに遅く、背後に回り込まれていた。少年のように低く唸る声が暗い通路に響く。


 首筋に何か細く鋭利な物が当たり、その声の持ち主は、容赦なく刹那の行動を抑制する。


 本来ならば即座に身を捩り飛びのきかわせるところ。しかし刹那には、それをかわすことができなかった。


 ……いや、誰なのか分かったからこそ、ほんの一瞬反応が鈍ったのだろう。


「何が目的だい?」
 

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