テキストサイズ

【S】―エス―01

第6章 我が目に棲む闇

 
「あの頃も今も、やってることは変わらないんだね」


 ――しばしの沈黙が過ぎ、やがて何かを理解したかの如く真理は訊ねる。


「2人を殺したのもあなたね?」


 刹那は俯き加減にくすくすと声を殺し笑う。


「このマウスは僕……いや、『僕ら』の代わり……でしょ?」


 彼女の質問を聞いてか聞かずか、そう言って口元き笑みを湛えた刹那は、掌(てのひら)の上でしきりに周囲を見回すマウスを軽く撫でた。


 そして再びケージに戻すと真理のもとへ1歩、また1歩と歩み寄る。


 逃げようとする真理を「逃がさない」と言わんばかりに横目で捉えると、見開いた両目の瞳孔がぎゅっと閉じ薄紫色に光を帯びる。


 途端、真理の体が空間を切り取ったように宙で留まり、さっと右手を前に翳(かざ)すと鈍い音をあげて強く壁に叩きつけられた。


 先ほど同様、刹那が左手を翳すと、台の上に散らばった解剖用のメスが4本ふわりと宙に浮く。


 そして空中で真理に刃を向け留まり合図を待つ。


「――ッ!」
 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ