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【S】―エス―01

第6章 我が目に棲む闇

 その目はとても冷ややかだ。


 刹那の問いかけに、彼女は黙ったまま否定も肯定もしない。それを見て嘲笑し続ける。


「……まあいいさ。どうせそのうち思い出すから」


 今一度ケージの中で蹲(うずくま)るマウスに視線を落とし、研究室を見渡すと言った。


「それに、そろそろ『彼』も気づくはずだ」


「あなた、いったいどこまで知って――!?」


 少し振り返り口角をつり上げ、まるで「全て知ってる」とでも言わんばかりの妖しげな笑みで応える。


 踵を返すと再び真理のもとへ歩み寄り、ズボンのポケットから水色と薄紫色をした薬品が入った栓つきの試験管を取り出す。


「――! それ、まさか……」


 刹那は「ご名答」とでも言いたげにくすくすと笑う。それを右手に持ちかえ、彼女の目前にちらつかせながら言った。


「さて、ここに2種類の薬があります。先生もよーく知ってる【S】の起源」


 ごくり、息を飲む真理に刹那は顔を近づける。


「僕が、何も知らないとでも思った?」


  

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