【S】―エス―01
第7章 再会の旋律
◇1
――201X年 5月8日。
翌朝8時10分、渡辺 真理が遺体で発見された。
第1発見者は同研究所のスタッフで、この研究室へ顔を出したところ発見に至ったらしい。
すでにやって来ていた鑑識課の1人である男が、香緒里たちを見つけ言う。
「いやぁ、新田さん。今回も酷いもんだ。あれじゃまるで【標本】ですよ」
――【標本】。鑑識の言ったその表現は、あながち間違いではない。
だが現場をより凄惨なものに感じさせたのは、体に突き刺さったガラス片と、壁や床に生々しくこびりついていた血痕だった。
眉をひそめ香緒里は訊ねる。
「目撃者は?」
「それが――」
山田は香緒里の後ろをちらりと見て、どうにも切り出し難そうに首を押さえる。
香緒里は山田の視線の先が気になり、顔だけで振り返った。
「……ネズミ?」
透明ケージの中のマウスを一瞥(いちべつ)する。
「実験用のマウスっすよ。事件当時、他には誰もいなかったみたいで」
一度くすりと笑い言った。
「……で、被害者に【あれ】はあったの?」
――201X年 5月8日。
翌朝8時10分、渡辺 真理が遺体で発見された。
第1発見者は同研究所のスタッフで、この研究室へ顔を出したところ発見に至ったらしい。
すでにやって来ていた鑑識課の1人である男が、香緒里たちを見つけ言う。
「いやぁ、新田さん。今回も酷いもんだ。あれじゃまるで【標本】ですよ」
――【標本】。鑑識の言ったその表現は、あながち間違いではない。
だが現場をより凄惨なものに感じさせたのは、体に突き刺さったガラス片と、壁や床に生々しくこびりついていた血痕だった。
眉をひそめ香緒里は訊ねる。
「目撃者は?」
「それが――」
山田は香緒里の後ろをちらりと見て、どうにも切り出し難そうに首を押さえる。
香緒里は山田の視線の先が気になり、顔だけで振り返った。
「……ネズミ?」
透明ケージの中のマウスを一瞥(いちべつ)する。
「実験用のマウスっすよ。事件当時、他には誰もいなかったみたいで」
一度くすりと笑い言った。
「……で、被害者に【あれ】はあったの?」