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【S】―エス―01

第7章 再会の旋律

 ふいと目を逸らし鑑識の男に訊く。


 男は一言「ええ」と答え、手袋をはめた指先で血に染まったシャツの襟元を捲る。


 香緒里たちは、ガラス片に飾られた被害者の頚部を覗き込む。


「【S】……――」


 血にまみれて分かりづらかったが、左の首元には確かに同じ【S】の文字が刻まれていた。


「今、この周辺からごく最近の指紋を検出してます」


 鑑識の男は言う。


「ありがとう。前に渡した手紙の指紋との照合も頼めるかしら?」


 香緒里の言葉に、男は苦笑いを見せながらも承諾した。


「あの……」


 割って入った山田の一声に、香緒里は振り返る。


「いえ、ね。監視カメラに映ってた映像なんですけど……」


 言いかけて山田は言葉を濁す。


「何?」


 香緒里は、山田が言い澱(よど)んだ言葉の続きを促した。


 モニターに映し出されたそれは、研究所の外の映像。


 監視カメラの画面上から、突如降って湧いたように現れた1人の人物。
 

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