少女グレイスと森の魔女
第9章 夜が明けるまで
71『不幸』
皆の視線がグレイスに注がれる。
グレイスはクレアの近くでたたずみ、おどおどしている。
動かなくなったクレアの体に触れようと、或いは体の上の土を払おうと、近くに寄って手を出してみては怖くなってすぐに引っ込む。
グレイスのそんな様子を見ながら、老婆はクレアの母からナイフをとってヒゲの男に話しかける。
「そこまで思いつめた人間にはこの世は生きづらいだろうが一応聞いておく。罪を背負って生きるつもりはないのかい?」
「…ない!」
「不幸な男だよ…」
「…うっ!」
「…いずれはあたしも森へと還ってゆくんだろうが、こんな風に逝くのは嫌だねぇ…」
グレイスは見てしまった。急いで老婆のもとへ駆け寄る。
「…ど、どうして?」
「今も心は揺らいじゃいるが、あたしもああするのが一番いいと思ったんだ」
「あ、…ああああ!
お婆さん!」
グレイスは老婆にしがみつく。
それを見ながらクレアの母が怒りをあらわにした。
「…不幸な男ですって?
なぜあんな男に同情できるの?覚悟して死ぬのと、訳も分からずおびえて殺されるのとでは次元が違うわよ」
皆の視線がグレイスに注がれる。
グレイスはクレアの近くでたたずみ、おどおどしている。
動かなくなったクレアの体に触れようと、或いは体の上の土を払おうと、近くに寄って手を出してみては怖くなってすぐに引っ込む。
グレイスのそんな様子を見ながら、老婆はクレアの母からナイフをとってヒゲの男に話しかける。
「そこまで思いつめた人間にはこの世は生きづらいだろうが一応聞いておく。罪を背負って生きるつもりはないのかい?」
「…ない!」
「不幸な男だよ…」
「…うっ!」
「…いずれはあたしも森へと還ってゆくんだろうが、こんな風に逝くのは嫌だねぇ…」
グレイスは見てしまった。急いで老婆のもとへ駆け寄る。
「…ど、どうして?」
「今も心は揺らいじゃいるが、あたしもああするのが一番いいと思ったんだ」
「あ、…ああああ!
お婆さん!」
グレイスは老婆にしがみつく。
それを見ながらクレアの母が怒りをあらわにした。
「…不幸な男ですって?
なぜあんな男に同情できるの?覚悟して死ぬのと、訳も分からずおびえて殺されるのとでは次元が違うわよ」