少女グレイスと森の魔女
第9章 夜が明けるまで
72『天照雨』
「同情ではないさ。見解を示しただけだよ。あんたたち家族には同情しているが」
「私たちを?
確かにクレアは可哀想だったけど、私になら同情なんていらないわよ。
恩を着せたつもりなら勘違いしないで。この手であの男を殺すことだってどうということはなかったのだから」
「それにしてもあっけない…
こんなものだったかしら?こんな…」
「前はどう思ってたんだい?ずっと相手を殺してやりたいと思ってたのかい?
本当に欲しいものはそんなものじゃなかっただろう?
殺したところで憎んだ時間や失ったものが戻るわけでもなく
ただ自分を守りたかっただけで…」
「ちょっと!
少し黙っててよ
…でもやっぱりあの男には…悔やんで自ら命を絶って欲しかった…
最期に人の手を借りるなんて情けない人…」
いつしか雨と風は弱まり、東の空から徐々に青さが戻ってくる。
やがて夜が明けると、森はいつもとは違う朝を取り戻し始めた。
雨はまだ降り続いているというのに長い陽光が辺りに射し込み、土の上や木の葉にかかる小さな雫は何事もなかったかのような輝きを見せていた。
そんなあまり見られない森の様相をグレイスが見ることはなかった。
「同情ではないさ。見解を示しただけだよ。あんたたち家族には同情しているが」
「私たちを?
確かにクレアは可哀想だったけど、私になら同情なんていらないわよ。
恩を着せたつもりなら勘違いしないで。この手であの男を殺すことだってどうということはなかったのだから」
「それにしてもあっけない…
こんなものだったかしら?こんな…」
「前はどう思ってたんだい?ずっと相手を殺してやりたいと思ってたのかい?
本当に欲しいものはそんなものじゃなかっただろう?
殺したところで憎んだ時間や失ったものが戻るわけでもなく
ただ自分を守りたかっただけで…」
「ちょっと!
少し黙っててよ
…でもやっぱりあの男には…悔やんで自ら命を絶って欲しかった…
最期に人の手を借りるなんて情けない人…」
いつしか雨と風は弱まり、東の空から徐々に青さが戻ってくる。
やがて夜が明けると、森はいつもとは違う朝を取り戻し始めた。
雨はまだ降り続いているというのに長い陽光が辺りに射し込み、土の上や木の葉にかかる小さな雫は何事もなかったかのような輝きを見せていた。
そんなあまり見られない森の様相をグレイスが見ることはなかった。