風景画
第22章 intermezzo 〜月と白猫
月が満ちた…
夜が明るむ しじまの中
もうひとつの月が
ひそやかな足取りで
屋根にのぼる
しなやかに
艶やかに…
金色の瞳を持つ白い猫
彼は 月のねこ
幼い頃
お前の毛色は月明かりのようだ
そう言われ
見上げた夜空を覚えている
まるい大きな輝きが浮かんでいた
思わず背伸びし
両手を掻くように伸ばしても
届くことはない
彼が初めて覚えた
「遠い」「遥かな」「夢」…
その日から
彼の心は月とともにあった
満ち欠けを
天空を渡る道を
すべての神秘もありのままに
見つめつづけた
地上の喧騒よりも
天上の静謐こそ
親しいものだったから…
今宵もまた
憧れよりも淡く
大きな月を見つめる
彼は…月のねこ
(了)