風景画
第53章 poemtory 〜夕陽の情景 Ⅱ
ここは
あの人が生まれた街
夢を見られず
捨てた、街…
ひとけのない
昼下がりのメインストリート
白日夢の中に紛れ込んだような
眩しい光が
バスから降り立つ私を包む
そう
すぐ背後には小さなカフェ
向かいにはバーがあり
東へ進めば人待ち顔のB&B
初めてなのに懐かしく
あなたが夜毎教えてくれた街並が
今も言葉のまま、変わらない
帰ることのない場所と言いながら
あなた…心の中では
帰りたい場所になっていた…
私は通りを西へと辿り
空色の壁 茶色の窓枠
小さな家を探しあてる
ポーチの揺り椅子は風に軋み
窓の汚れに
あどけない落書きがひとつ
ここへ来れば
あなたに会えるような気がしてた
それなのに
あなたが
いないことを知るばかり…
恐いものなどないはずだった
失いたくないものなど
二度と、ほしくなかった
けれど…
蹲り膝を抱える私の肩に
ほのかなぬくもり
そっと振り返れば
道の彼方に大きな夕陽
頬を濡らし続ける涙
あと少しだけ…
遠いあなたに呼びかける
(了)