風景画
第67章 poemtory 〜海辺にて
ひとときの眠りから
体を起こせば
窓に映る微かな明るみ
遥かな岬の灯台か…
淡く明滅をくりかえす
夜の底はまだ深い
腕の中に眠るひとの
寝息は胸元を甘くくすぐり
心を揺らす
愛しい景色が甦る…
波打ち際で
水平線を見つめる遠いまなざし
振り向く頬には
ひとすじの涙の跡
波のしぶきと紛らすあなたを
抱き寄せ指でなぞれば
そのまま
深い口づけに変わってゆく
真昼の蜃気楼に囚われたふたり
逃れられずに夜へと流れた
…目蓋に触れた唇で
まどろみから覚め
微笑むあなた
シーツのままに抱き上げ
窓辺に立てば
かすかに響く潮騒が胸に染み入る
夜の色が増してゆく…
首に纏わる細い腕のぬくもりが
刹那の夢へとふたたび誘い
惑わせる・・・
(了)