風景画
第101章 サザンクロス・レター
** 兄から妹への手紙 **
親愛なる君へ
星はなんでも知っている…
そんな歌があったように思うけど
あの夜は、嵐だった
窓をこじ開け
書斎に侵入した強盗が
父さんに切り掛かり返り討ちにされた
自分と家族を守った正義の行為…
これが事実だ
君も聞いている、その通りだよ
そして
僕は大学の友人宅で飲んでいて
留守だった
君が見たと思ったのは
別の日の記憶…間違いだ
…けれど
君は想像を膨らませるのだろうか
だとしたら…
それでも…
ねえ
ときどき僕は思うのだよ
我々は
事実で間に合わせるしかない現実を生きている、と
だから
君は終わったことに捉われず
幸せに過ごしてほしい
今17歳か…
もう少し淑やかにすれば
きっと
素敵なレディになるだろうからね
僕の願いはそれだけだ
手紙をどうもありがとう
どうか元気で…
さようなら
(つづく)