風景画
第8章 intermezzo 幻の風景〜吟遊詩人 Ⅳ/Ⅴ
詩人はうたう 恋心を
一途な王の想いを乗せ
乙女の窓辺で 熱く、甘く…
けれど窓は閉ざされたまま
一夜、二夜、三夜…
無言で月は満ち続け
四夜、五夜、六夜…
詩人の言葉とリュートの音は
夜に消えゆくばかり
「あなたはさながら
私の想いを拒み続ける氷の花
けれど
どれほど険しい山の頂きに
咲いていようと
この背の翼で
ひと思いに翔けゆこう
そして百の口づけを…
融ける氷の雫を湛え
震える花弁
さらに千の口づけを
愛の焔で色付く花よ
月明かりの褥で契りを交わし
永遠の愛を誓い合おう…」
七夜めは折しも月の満ちる夜
・・・切なる想いは
ついに窓を開かせた
(つづく)