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風景画

第12章  紅染月 ②




星の見えない夏の夜空は

肌に纏いつくような

とばりを下ろす



夢と現つが入り交じる刻…



とばりの隙間から

黒い猫が顔を覗かせ

眠りへ誘う



金色の目に魅入られ

伸ばす手を擦り抜けて

長い尾を大きく揺らし

翻る



あと少し…

戯れるように身を踊らせては

幾度も私を惑わせる



やがて空は明るみ始め

知らぬ間に消えた猫…



置き去られた私は

気怠く身を起こす







(了)



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