風景画
第13章 intermezzo 〜吟遊詩人と羊飼い
** そのⅡ **
羊飼いは指折り数える
その日までを…
不思議な胸のときめきを
覚えながら
やがて
月が満ちる日の昼下がり
件の川辺に
リュートの響きが水面を流れる
「心のままに弾いてごらん
思いは調べとなり
人の胸に響くだろう
それはお前の声となる」
詩人は微笑み
羊飼いに竪琴をそっと手渡す
束の間大きく目を開き
後退りをしながらも
美しい竪琴は少年の心を奪う
ぽろむ…
ぽろろむ…
心を紡ぐその響きは
今 羊飼いの声となった・・・
ぽろ ぽろむ…
ぽろむぽろむ…
切れ切れに
けれど優しげに
竪琴の音は流れ続け
鳥が 蝶が 動物たちが
そっと聞き入る
詩人はひとつ吐息を洩らし
やがて
静かに川辺を離れる
(終)