風景画
第13章 intermezzo 〜吟遊詩人と羊飼い
** そのⅠ **
吟遊詩人
旅の途中の昼下がり
川のほとりで静かに憩う
「愛しきもの
せせらぎの間に聞こえる
駒鳥の囀り
乙女らの交わす囁きに似て
心騒がせる」
傍らに
十ばかりの羊飼いの少年ひとり
詩人を見つめじっと聞き入る
その様子を見やり
「次はお前のことを詩おうか
聞いておくれ」
とリュートを奏でる
「声を持たぬ身は辛かろう
けれど
花が語らず人を癒し
星の瞬きは旅人を導くように
静かなお前の微笑みも
心を包む優しい光…」
羊飼いの瞳は
たちまち涙に閉ざされる
「今宵は新月
十五日の後
月満ちる日のこの時刻に
再びここで会うとしよう」
ひそかな約束と
駆け去る羊飼いの後ろ姿
突然
風がざぁと唸り
見送る詩人の
黒髪を掻き上げる・・・
(つづく)