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雨のち曇り、時々晴れ【ARS】

第33章 このままもっと【翔・潤】

次の日の朝、僕はキッチンで朝食の準備をした。

目玉焼きにサラダ、トーストにコーヒー。

日曜日は、通いの家政婦のキヨさんが休みだから、僕が毎週土曜日の夜はここに泊まって翔くんの世話をしている。

誰に頼まれたわけじゃない。

僕がそうしたかったんだ。

ワイフの真保は、小言を言う。

そりゃあ、そうだ。

家族でもないのに、毎週毎週高速を飛ばして泊りがけで世話をしに行くなんて。

朝食の準備ができると、翔さんを起こした。

潤「翔さん、起きて。」

翔「ん、ああ…。」

ふたりでダイニングテーブルで朝食をとった。

テレビは旅の番組が流れている。

今日の特集はハワイ。

美しい海と陽気な人々、壮大な大自然が魅力いっぱいに映し出されている。

翔「……。」

翔さんは、黙ってテレビを見つめている。

潤「ハワイ、懐かしいね。」

翔さんは、ほんの少し目尻をゆるめた。

俺たちの出発の地。

思い出がいっぱい詰まった地。

潤「行こうよ、ハワイ。一緒に…。」

翔さんが、目を丸くした。

翔「行けるのか…、ハワイに…。」

潤「行けるよ、ふたりで行こう。」

僕は、翔さんの手を握った。

翔さんは、肩を震わせて涙を一粒こぼした。

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