テキストサイズ

雨のち曇り、時々晴れ【ARS】

第33章 このままもっと【翔・潤】

真保の舞台の初日の次の日、僕は翔さんとハワイに旅立った。

二人でプライベートの旅行なんて、初めてだ。

翔さんの体調を考慮して、予定は詰め込まず余裕を持ったスケジュールにした。

翔さんは、機内からじっと窓の外を眺めていた。

テロに巻き込まれてから、初めての海外だ。

旅行が大好きだった翔さんは、言葉は少ないが感慨にふけっている様子だった。

機内ではワインを少し飲んで、窓を眺め、少し眠った。

翔さんは、おだやかな表情をしていた。

ハワイに着くと、手配していたレンタカーで定宿にしているホテルに向かった。

部屋は、海が見える高層階を予約した。

潤「翔さん、ほら海が見えるよ。」

僕は翔さんの車いすを押して、バルコニーに出た。

翔「おぉ、おぉ…。」

バルコニーには、海からの潮風が吹き抜けた。

白いビーチが続く海岸線は、あの時五人で来た時のままだった。

夕暮れまで、二人でバルコニーで過ごした。

また少しワインを飲んだ。

翔さんは何も言わず、ただ海を眺めていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ