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雨のち曇り、時々晴れ【ARS】

第33章 このままもっと【翔・潤】

洋館に入ると、ずっと閉め切られていた室内は少しカビくさかった。

僕は、部屋中の窓を開けて、空気を入れ替えた。

庭に出てみると、赤い木香薔薇が咲いていた。

あれから手入れもされておらず、伸び放題の枝に赤い薔薇がこぼれるように咲いていた。

木香薔薇の向こうには、海が見える。

キラキラと水面が日の光を反射している。

しばらく海を眺めていたら、ドアチャイムが鳴った。

玄関に出てみると、キヨさんが立っていた。

潤「キヨさん、久しぶり!」

キヨ「近くを通りかかりましたら、こちらに松本様のお車が見えまして。うかがった次第でございます。」

僕はキヨさんを部屋に招き入れた。

キヨ「このおうちも、懐かしゅうございます。まさか旦那様があんなに急に亡くなられるとは…。」

キヨさんは、ハンカチで目頭を押さえた。

潤「泣かないでよ、キヨさん。」

キヨ「旦那様はお幸せです。信頼する松本様に看取られて、思い出のハワイで最期を迎えられるなんて…。」

僕は、チクッと胸が痛んだ。

それからしばらく、キヨさんと翔さんの思い出話をした。

この家が人手に渡ることを話すと、キヨさんは心底残念がった。

潤「キヨさん、本当に今までありがとう。」

キヨさんは、「私の方こそ、旦那様と松本様にはよくしていただいて感謝しております。」と、頭を下げて、帰って行った。

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