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雨のち曇り、時々晴れ【ARS】

第2章 タオル【潤】

俺はワインセラーから、赤ワインを一本取り出した。

ソムリエナイフで栓を開けると、グラスに注いだ。

グラスをまわして香りを嗅ぎ、ひとくち口に含む。

翔さんの女性関係はそれなりに知っている。
いちいち本人に聞いたりはしないけど、まわりからの情報もあるし。

でも、最近彼女と別れたとか、新しい彼女ができたとか、そんな話は聞かない。

翔さん自身も、そんな素振りは見せない。

またひとくち、ワインを口に含む。

俺は、この甘いベリーの香りが、どうしても気になってしかたなかった。

リモコンを手に取り、テレビをつけた。
ちょうど翔さんの出演してる番組が映し出された。

『チェリー翔子インザスカイ!』

それは、翔さんが新宿二丁目のおネエさんたちと夜会をする、という企画だった。

「翔さん、マジすげぇな。」

俺は笑い転げながら見入った。
個性豊かなおネエさんたちと、丁々発止トークを繰り広げる。

でも、翔さん若干びびってるな。
翔さんはヘタレな部分もあるけど、トークに関しては覚悟を決めて毒を吐いたり、突っ込んだりする。

そんな部分も、男らしい。

そんなことを思いながら番組を見ていた。

その時、テレビの中の翔さんは言ったんだ。

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