テキストサイズ

雨のち曇り、時々晴れ【ARS】

第2章 タオル【潤】

「翔さん、いま家?」

『あぁ、そうだよ。』

「ひとり?」

『何だよ、当たり前じゃねーか。』

電話の向こうで翔さんが笑ってる。

俺はソファに寝ころがったまま窓に目をやると、見える満月。

「翔さん、少し時間いい?」

『何だ?』

「西の空見える?お月見しようよ。俺いま、ワイン飲んでるんだ。」

『何だよ、まるで恋人同士だな。』

“恋人”という言葉に、胸がチクッと痛んだ。

『しょうがねーな。待ってろ、俺も酒用意するから。』

しばらくして、電話の向こうで、かすかにキンという音がした。
おそらく、グラスに氷を落としたのだろう。
翔さんは焼酎が好きだ。

『お待たせ。』

翔さんは酒の用意が終わったようだ。

「うん…。」

俺は再び右手を動かし始めた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ