
凍夜
第3章 花
「アリサ、しっかりしろよ。」
その日は、私と銀さんとアリサさんと三人で、ススキノの銀さん馴染みの寿司屋で食事をしていた。
いつもは、ダイアモンドが閉店した深夜に銀さんと二人で食事をするのだが、珍しくアリサさんも一緒だった。
「しっかりって何を?」
アリサさんは、ヒラメを口に運ぶと日本酒をぐいっと飲んで肘をついた。
すかさず銀さんが、カウンターの向こうに、「大将!冷やでもう一杯!」と声をかけた。
なみなみに注がれた、冷やが、カウンターの向こうから滑り込んできた。
「へい、お待ち!」
アリサさんは、またそれを勢いよくあおると「私のどこが、しっかりしてないって言うの?こんなに働いてるのに。」と口を尖らせた。
「よく頑張ってるよ。わかってるさ、でもな?あいつらに入れ込んでなんになるんだ?」
銀さんは、生ビールを一口飲んで言った。
