
凍夜
第4章 カタルシス
「運転……できるの……?」
私の問いかけに、マサシは押し黙りキーを回した。
エンジンのかかる音と共に車は急発進した。
ラジオの音が、かすれるように流れるのを聴きながら、私達は無言だった。
車は鬱蒼と生え繁げる木々をくぐり抜けるようにカーブの強い峠下道を登り続けた。
工事中の看板が立っている場所でマサシは車を降り、その看板をよけ、また車を発進させて侵入した。
砂利道を走る振動で、車体が激しく揺れた。
まるで、飛行機が、着陸に失敗したかのようだった。
車のライトだけが頼りの闇の中に、廃墟と化した小さな建物が見えた。
