凍夜
第6章 浸食
いつものユーロビートが流れるフロアーで、ブラックライトに照らされたユキの歯が白く覗いた。
「リナ~?私、ココ辞めるよ!」
「は~?何言ってんの!一人で、どっか移る気してんの?私も一緒行くよ!」
「……ゴメン、ピンサロなんだけど?」
「……?え?」
私は驚いた。だってユキはあんなに風俗イヤだって言ってたのに。
「私の彼氏ってゆーのかな……?うん、その彼氏がね、ピンサロやってんだよね。そんでウチこいって、ウチで働けっていうんだ!」
「ハァ?それが彼氏の台詞かよ?あり得ないんだけど!止めなよ、そんな男。」
「や~!彼氏、心配性だから目の届く所で働いて欲しいんだって。ウチなら安心だからって、かなり言われてなんか断れないよ!」
「……ユキね、おしぼりでただ拭いただけのチンコくわえんの平気だっけ?それも不特定多数ので、やっすいギャラでね?」
「……ん~。」
「てゆうか、彼氏の見ている側でチンコくわえんのなんか変じゃん、彼氏がソレ平気なのも、なんかね!」
「……。私、彼氏のこと好きなんだよ。だから信じてるし……。」
「……ユキ!頼むって、しっかりしてよ?」
「……リナにはわからないよ!私の気持ちなんてっ!」
ユキを怒らせてしまった。
私はユキをあの時、確かに追い詰めた。
今なら、よくわかっているけど、あの頃は私もまだ青かったから……。
《あの時は本当にごめん。》