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凍夜

第6章 浸食


「イヤー、リナさん、もっと飲んで下さいよ。今、またワインきますよ。」

その男、川原は本日入会したばかりの、大切な新メンバーだった。


このススキノの夜をゆったりと演出するシティホテルのスイートルームはどうやら川原の馴染みのようだった。


「さ、違うの飲みましょう?これ、気に入ってくれたらいいなぁ。」

川原がロマネコンティのボトルを撫でながら嬉しそうに私の目を覗きこんだ。


「あら、ロマネ?好きよ。嬉しい♪」

「本当に?良かった!さ、飲んで下さいよ。」

川原が丁寧に私のワイングラスを取りかえてくれグラスに注いでくれた。

「川原さんも……。」

私もお返しに注いだ。

「リナさん、ワイン好きなんですね―。僕はそんなに詳しくなくてごめんなさい。」

思わず、私の胸が痛んだ。

正直、私だってワイン好きだけどそんなに詳しくはない。

なのに、私は知ったふうな事を平気で言える。ご馳走になっているのに……。

「川原さんのおもてなし、私、とっても楽しんでます。だから、川原さん、肩の力を抜いて、一緒に楽しんで♪ね?」

私はグラスを頭の上に掲げて川原に笑いかけた。

「本当に?イヤー正直、ちょっと力入ってたよ。参っちゃうね!」

川原が照れくさそうに頬を押さえて笑った。


その姿を見ていたら、こんな優しい男性なら是非ユキに会わせてあげたかったと心底思った。

川原みたいな男は私から見て上客だった。

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