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凍夜

第6章 浸食



私はホテルを出ても直ぐにタクシーには乗らなかった。


もう一度だけ、あの道を通って確かめたかった。



細かい雪が、散らついていたけれど夜空は澄みきっていた。


あの日のように星が綺麗だった。

ちょっと探せば北斗七星を見つけることができた。


私は鴨々川沿いの道をゆっくりと踏みしめながらあの日の事を思い出していた。


《私達は、この道を、確かに一緒に歩いた。》


雑踏の中、忘れられてゆく記憶の景色。


それは未だ流れを諦めることなく歴史を乗せて密やかに運命と共にあった。

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