凍夜
第8章 鎖
ゆりかが、小さく喉を鳴らしたのを、男は決して聞き逃さなかった。
男の運転する車は、どんどん町を離れて行く。
ゆりかは、落ち着かない、思いで、窓の外を見たり、後ろの窓から見える景色を、ちらちらと盗み見ては、助手席に座る自分の、太ももの上で、両手を握り、お父さんはやっぱり来なかった、と、うなだれるしか無かった。
そんなことばかりが、ゆりかの心を寂しがらせたり、傷つけたりしていたのだが、どうせ直ぐに忘れるはずになると、頭を切り替えるしかなかった。
(お父さんは、今日も来ない、いつも後から、行けなくてごめんね、ゆりかが心配だったんだよ?)
と、いつもな切迫したような声で、私に訴えるんだ。
あの細い体で、私を、「大切な可愛いゆりか」と、抱き締めて、何があったのかも聞きはせずに、嘆き泣き笑いに似た、表情を、浮かべるのは、もう、ゆりかが子供でも、なんとなく予想できるようになっていた。
‥‥‥でも、それでも、離れられないゆりかが、悪いんだよね?‥ゆりかは、お父さんも、ママも、大切だから‥‥。
ねえ?パパ、ママ?
ゆりかが、いい子にしてれば、きっとまた、愛してくれるよね‥‥‥?!
男の運転する車は、山道を、昇り、振り返ると、後ろの窓から、赤や黄色、青や、緑の、街明かりが、小さく目に映った。
淋しいよ!
独りは、イヤだよ!
‥‥‥ねぇ?パパ、ママ?
(私は、いつまで、こうしていたらいいの?‥私は何処に行けば幸せになれるの?学校の他の子たちのように、笑える日が本当に来るんだよね?‥‥‥)
ふと、顔を上げると、ゆりかの横顔に、男の射るような視線が、突き刺さるように感じ、ゆりかは男の顔を直視できなくて、前を向いたまま、目を閉じた。
頭の中で、チャンネルの合わないテレビの雑音みたいな、ザーッとした音が、一瞬、鳴り響き、直ぐに、消えた。
目を開くと、ただ、暗い闇だった。
男の運転する車は、どんどん町を離れて行く。
ゆりかは、落ち着かない、思いで、窓の外を見たり、後ろの窓から見える景色を、ちらちらと盗み見ては、助手席に座る自分の、太ももの上で、両手を握り、お父さんはやっぱり来なかった、と、うなだれるしか無かった。
そんなことばかりが、ゆりかの心を寂しがらせたり、傷つけたりしていたのだが、どうせ直ぐに忘れるはずになると、頭を切り替えるしかなかった。
(お父さんは、今日も来ない、いつも後から、行けなくてごめんね、ゆりかが心配だったんだよ?)
と、いつもな切迫したような声で、私に訴えるんだ。
あの細い体で、私を、「大切な可愛いゆりか」と、抱き締めて、何があったのかも聞きはせずに、嘆き泣き笑いに似た、表情を、浮かべるのは、もう、ゆりかが子供でも、なんとなく予想できるようになっていた。
‥‥‥でも、それでも、離れられないゆりかが、悪いんだよね?‥ゆりかは、お父さんも、ママも、大切だから‥‥。
ねえ?パパ、ママ?
ゆりかが、いい子にしてれば、きっとまた、愛してくれるよね‥‥‥?!
男の運転する車は、山道を、昇り、振り返ると、後ろの窓から、赤や黄色、青や、緑の、街明かりが、小さく目に映った。
淋しいよ!
独りは、イヤだよ!
‥‥‥ねぇ?パパ、ママ?
(私は、いつまで、こうしていたらいいの?‥私は何処に行けば幸せになれるの?学校の他の子たちのように、笑える日が本当に来るんだよね?‥‥‥)
ふと、顔を上げると、ゆりかの横顔に、男の射るような視線が、突き刺さるように感じ、ゆりかは男の顔を直視できなくて、前を向いたまま、目を閉じた。
頭の中で、チャンネルの合わないテレビの雑音みたいな、ザーッとした音が、一瞬、鳴り響き、直ぐに、消えた。
目を開くと、ただ、暗い闇だった。