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食わず嫌い

第1章 カシスオレンジ

「よっ、歩。浮かない顔してどうした?」


ラブホ街から出ないうちにツレの桐也と会った。


「いや…別に」

「もしかして失敗した?」

「はぁっ……んなわけねぇし!」


一瞬動揺した。
なんでセックスがうまくいかないこと桐也にわかんだよって。
でもすぐに気づいた。
ラブホ街で浮かない顔してたらそりゃ失敗したと思うわな…。


「しょうがないなぁ、じゃあ桐也様がすげぇテクを伝授してやんよ♪」

「えっ……!?」


何を思ったのか、桐也は俺の腕を引っ張りラブホへと入っていこうとした。


「ちょ、なに考えてっ…」


若干、俺よりも背の高い桐也の顔が近づいてくる。


「……意外といけるかもよ?」


そう囁いた後、桐也は俺の唇を奪った。


「……っ!!」


突然のことで固まってしまった俺。
桐也の舌が口内に入ってくる。



………カシスオレンジ………



桐也の舌はカシスオレンジの味がした。
居酒屋でよく俺が飲む酒の味。
だからなのか、不思議と違和感は感じなかった。


桐也の舌がゆっくりと俺の舌に絡む。


「……んっ……は……」


あれ?
俺、感じてる?
桐也の舌が意外にも美味しくて、気持ちよくて…。
俺は自ら桐也の舌を追った。



…………意外といけるかもしれない。






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