食わず嫌い
第3章 チョコレート
『なぁ、歩はチョコくれないの?』
「──は?」
今日は二月十四日、バレンタインデー。
世の男どもがソワソワする日。
朝バイトに行く準備をしていると、桐也から電話がかかってきた。
「なんで俺が桐也にやんなきゃいけねぇんだよ」
『え、だってお前、オレのこと好きだろ?』
「はっ!?」
何をサラリと言ってんだよ、こいつは。
俺が桐也を好きだって?
「誰がいつそんなこと言ったんだ」
『自覚なし? こないだオレとアイス食った時、めちゃくちゃ気持ち良さそうな顔してたじゃん』
「ばっ…そ、そんな……! てか、今からバイトだから切るぞ!!」
俺は動揺しながら電話を切った。
全く…朝からなに言ってんだ、あいつは。
こないだ熱出した時にあんなことしちゃったのは、熱で朦朧としていたからで…。
決して桐也とのキスが気持ち良かったわけでは…。