ネムリヒメ.
第9章 イチゴ味の夜と….
「ちーちゃん…?」
隣にきて首を傾げて顔を覗きこむ葵くんに、アタシは立ち上がってなにも言わず彼に抱きついた
「っ…!!」
「……」
胸元に顔を埋めていると、そっと背中に彼の腕が触れて抱き締め返される
「オレ…襲っちゃうって言ったじゃん」
「…うん」
目の前が、爽やかな香水の香りが混じった彼の匂いでいっぱいになる
「…ホントに抱くよ!?」
髪を耳にかけられて、耳元から彼の少し掠れた声が聞こえる
「……うん」
アタシは葵くんの背中にまわした手で彼のシャツをキュッと掴んだ
彼の唇が頭に触れてから、うつむくアタシの耳に触れる
「ん…」
その感覚にピクリと肩が揺れた
「ちーちゃん…顔あげて」
そっと顔をあげるとアタシを優しく見つめる彼の揺れる瞳と出会う
きのう夜や今朝、アタシを誘惑したときのギラギラした獣のような瞳の葵くんじゃなくて、今の彼は優しいままだ
凛とした瞳を揺らす彼に胸がギュッとなって、自分が今どんな顔をしているかわからなかった