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ネムリヒメ.

第10章 眠らない夜.







「ちーちゃん、アイス食べよー♪」


夕方、そう言って帰ってきた聖くんとリビングで仲良くアイスをつつくアタシ


手のなかには、彼が愛して止まないアイスクリームブランドの期間限定、しかも今日発売されたばかりのマンゴーオレンジのアイスクリーム

本物のマンゴーを食べているみたいに濃厚なのに、オレンジの爽やかな風味が鼻を抜けるこのさっぱり感♡


うーん、おいしい♡
幸せ♡
癖になりそう♡


ソファーの隣では淡いグレーのスーツ姿のまま聖くんが無邪気な笑顔を浮かべていて、このアイスのために早々と帰ってくるとか、彼のアイスクリームに対する愛は計り知れない

さすが、超甘党王子


因みに、さっきまでいた渚くんは

「深夜までには帰るから…」

と、聖くんと入れ替わるように仕事に出かけ、葵くんもまだ戻らず、今は聖くんとふたりきり


…雅くんの姿はきのうの夜以来、あれから見かけてない


「ねぇ…」


突然、身を寄せアタシの手元を覗きこむ聖くん

………!?

空気が動いて、聖くんからアイスクリームみたいな甘い匂いがする


「…ちーちゃんのアイス、なんか変じゃない?」


変…!? 変なアイスとか聞いたことないよ!?


「うん!? そうかな…」

「溶けるの早いよ、ほら」

「そう!?」


一緒に食べ始めた聖くんのカップを覗きこんで比べると確かにアタシのアイスだけ

…え、溶けてる!!?

同じ場所で買い、同じタイミングで食べ始めたのにこの違いはなに?




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