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ネムリヒメ.

第10章 眠らない夜.





「聖くん ゴメンね…」

「ん…ちーちゃん、熱計ろ!?」

「うん…」


ボーッとしながら彼に渡された体温計を素直に受けとる


……ピピピピ…ピピピピ…


しばらくして体温計の電子音が鳴った


「7度8分……ダメだね」

「ん…」


よくこれで平気とか言ってたな、アタシ…
これじゃ、聖くんにああ言われても仕方がない


「とにかく、薬のんで水分とらなきゃ…オレ買ってくるね」


え……


「……やっ…」


アタシはベッドの縁から立ち上がった聖くんに手を伸ばした


振り返る聖くんの手を引いて、首を横に振る


「薬飲まなきゃ…それに、ちーちゃんは寝てなきゃダメだよ」


困った顔をしながらアタシの頭を撫でる彼


聖くんを困らせてるのはわかる

でも…不安が過った

体調が悪いせいなのか、聖くんのメンタル攻撃のせいなのか…

ひとりになると思ったら急に不安になって、薬なんてどうでもいい…

この部屋でひとりになるのが嫌だと思ってしまう


「やだ…」

「っ…!?」

「薬なんかいらないから…いかないで…」

「ちー…ちゃん!?」


彼を見ながら消えそうな声で訴えるアタシに、聖くんが驚いて再びベッドに腰をおろす



熱を出して倒れたうえに、とんでもないコトを言っているのはわかっている



でも…

泣きそうになって鼻のあたりがツーンと酸っぱくなった


「…わかった……だからそんな顔しないで」


聖くんはそれ以上言わなかった


最悪…
どうしようもないな、アタシ…





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