ネムリヒメ.
第10章 眠らない夜.
…………………
「っ…ふぇ…」
深い夜の静かなの部屋に、彼女の嗚咽だけが溶け残ったホコリのように微かに響いていた
肩を揺らしながらしゃくりあげる千隼の背中をさすり続ける渚
時おり息を詰まらせながら泣きじゃくる彼女のカラダは僅かに震えていた
「怖い…っ怖い…よ…」
「「っ…」」
嗚咽しながら蚊の鳴くような彼女の小さな声が渚と聖の耳を掠める
「眠るのが…怖い…」
「……」
「ひとりが…怖い…」
「……」
「…静かな夜が怖い…の」
「っ…」
「ちー…ちゃん…」
聖が渚の腕のなかにいる千隼の髪をそっと撫でる
細い彼女のカラダがいつもより小さく見えた
「っ…ごめんなさ…ぃ」
瞼を真っ赤に泣き腫らしてか細い声をあげる彼女
「もうなにも言わないで…」
「っ…ふぇ…」
聖の切ない声が部屋の空気を震わせる
…しばらくして静かになる千隼
見れば渚の腕のなかで泣き疲れ、濡れた睫毛を伏せて静かな呼吸を繰り返していた
そんな彼女の穏やかな寝顔を渚と聖はただ静かに見つめていた