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ネムリヒメ.

第12章 アイスクリームシンドローム.





「千隼!?」


彼が表情を一変させ、驚いたまま固まっている




「……だから…?」


「……!?」


アタシはそんな彼を見つめたまま、無意識に唇を動かしていた





「……だから…抱いてくれるの?」





えっ………


…なに言ってるんだろ、アタシ


「だから…」


ねぇ、待って…
やめようよ、それ以上言ったら…
…ほら、胸が痛くなるから


「だから…側にいてくれるの?」


返して欲しいコタエなんて決まってるくせに…

勝手に期待して傷つくのは自分なのに…

バカじゃないのかな、アタシは…


「っお前…」


渚くんの揺れる瞳には今にも泣きそうな顔をした自分が映っていた



「アタシが楓の…っ…」




…そこで途切れる言葉




「…バカかお前は、何回も言わせんな」


「……!!」



唇を離した渚くんが頬に零れた滴を長い指でそっと拭う


「泣くな…」

「っ…」

「自分自身で苦しいくせにそんなコト言ってんなよ、それに…」


彼の声が優しくて、胸がキュウキュウと締め付けられるように痛くて、溢れ出す涙で前が見えなくなる


「オレは頼まれたからって素直に抱くようなお人好しじゃねぇよ…」


「……!!」



…涙の味がする口づけは

どこまでも優しくて温かい


カラダを起こし、そっと目を細めてアタシを抱き締める渚くんにあの夜のようにしがみつく

彼に抱いて欲しいと告げたあの日のアタシ…


その他のコトは思い出せないけれど

楓大好き人間のはずのアタシが、彼にすべてを許した理由が今ならちょっとだけ

わかるような気がした…




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