ネムリヒメ.
第3章 無くしたモノ.
「さーてーとっ…何から話そっかなー♪」
アタシの隣で聖くんが栗色の髪にくるくると指を絡めながらどこか楽しそうに呟いた
葵くんは聖くんの向かいの席に、渚くんはその隣の席でコーヒーカップを傾けている
「じゃーねー…最初に確認からね」
「ぅ、ん」
なんかちょっと緊張するけど、さっきのハンバーグのくだりのお陰で話しづらい雰囲気はなかった
アタシは聖くんの目をまっすぐ見る
「ちーちゃん、自分の名前言える?」
「ぁ、うん」
「言ってみて」
「結城…千隼(ゆうき ちはや)」
…なんかドキドキするな
「歳は?」
「んっ…22歳」
「オッケー、大丈夫だね」
聖くんがにっこり笑うと、自分の名前とか当たり前のコトなのに言えたことにホッとする
「本題に入るね。ちーちゃんはきのうの自分に何があったか覚えてる?」
「っ………覚えて…ない…」
目を伏せて首を振る
「ってことは…どうしてここにいるのかも?」
「………わかんない…」
自分の言葉に改めてその現実を実感した
聖くんが続ける
「それに気づいたのはいつ?」
「今日…ベッドで目を覚ました時…」
「そっか…」
いつの間にか冷たくなっていた手を膝の上でぎゅっと握りしめる
「大丈夫、だからそんな顔しないで!?」
自然と泣きそうになっていたみたいで、聖くんがアタシの冷たい手にそっと手を重ねてくれた