ネムリヒメ.
第3章 無くしたモノ.
…ブハッ!!
時計の針の音だけが聞こえる沈黙を破ったのはそんな音だった
驚いて顔をあげると、葵くんが口元を抑えて咳き込んでいる
「ったねーな、葵…コーヒーかけんなよ」
その隣で迷惑そうに眉を寄せている渚くん
「ちょっと、ナギー!?」
「あ?」
渚くんがコーヒーがかかったシャツをナプキンで拭いていると、葵くんが正面から渚くんの両肩に掴みかかった
「ナギのコトしか覚えてないって、お前どんだけなの!? どんだけやったの!?」
「葵、いてーよ」
しれっとした態度の渚くんを葵くんがガクガクと揺さぶる
うわっ‼ ちょっと…
アタシは呆気に取られるばかりで、ただふたりを見つめる
しかし…
「ちょっとうるさい!!」
「ぁっ ゴメ…」
「悪い…」
「せっかく話してくれてるんだから静かにして!!」
「「…………」」
聖くんの顔からは想像できないドスのきいた声にふたりが静まりかえった