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ネムリヒメ.

第3章 無くしたモノ.







「長旅の疲れと、時差ぼけと、楓がいないのなんのって、お前の機嫌は最悪だった…すげーワガママだったし」


渚くんが睫毛を伏せてため息をついた


「…ゴメンなさぃ」


覚えていないとはいえ、初対面の人に対して最悪だったんだな、アタシ…


「それからワガママにさんざん付き合って、疲れたとか、風呂とか言ってるお前を休ませるのに部屋に連れてった」


あぁ…ホントにゴメンなさい


「お前に付き合ってしばらく部屋にいた後、セレモニーのホストだったオレはどうしても戻らないといけなくなった……」


「うん」


「………」


それまで淡々と話していた渚くんが急に黙った


んっ!?


彼がアタシの顔を見る



「渚…くん!?」




「千隼……オレが戻ったあと、なにがあった…」



ぇ………



少しトーンを落とした声で囁く彼


「そのあとって…?」


言ってることがよくわからない


アタシの顔を見つめる彼の表情が曇る


っ…なんでそんな顔するの?


見れば葵くんも聖くんも神妙な面持ちで黙ったままだった


「お前…下手したらあのまま……」


ぇ…


渚くんの切れ長で漆黒の瞳が揺れる



なに……



覚えていないはずなのに

ドクドクと心臓がなんだか嫌な音を立てていた



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