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未知夢

第9章 異動

 愕然としながら項垂れてはいたが、サッと気を取り直し、繁はなぜか隣の亀代おばちゃんの部屋のドアをノックした。


『コンコン』


「すいませ〜ん」


 繁が声をかける。


『ガチャ』


 鍵を外す音が聞こえ、中から、亀代おばちゃんが顔を出した。


「はい、どちら様?」


 そりゃそうだ。


 この時はまだ、繁はこのアパートには越してきていない。


「あ、はじめまして。私、今後隣の部屋に越してくる予定の者です。ご挨拶としてこれを」と、繁はその紙袋を差し出した。


「え?」


 亀代は戸惑った。


「あの、今後ともよろしくお願いいたします」と、無理矢理紙袋を渡して繁は小走りに去って行った。


「これであのお菓子が無駄にならずにすんだ」


 傷んでいたとしても、繁にとっては知ったこっちゃなかった。



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