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未知夢

第11章 確保

 繁はその原因に心当たりがあった。


「あ、どうもご苦労様でした」


 繁はそう言うと、額から変な汁をにじませて2階に上がって行った。


 久しぶりの我が城。高円寺と言うおっさんも住んでいない、現在の自分の部屋。


 敷きっぱなしの布団にゴロンと横たわる。


 出しっぱなしのこたつの上に置いた、堅焼き醤油煎餅に手を伸ばす。


「はぁ……」


 繁の口からはため息しか出て来ない。


 疲れきった表情で煎餅を一口かじると、ボリボリと音をたてながら、スッと目を閉じた。


 一番安心出来る自分の部屋の布団の上。


 安堵の表情を浮かべると同時に、繁の目から涙が溢れる。


 自分は一人。


 高校生の頃に英語の教科の女性教師といい関係になってから、まったく女性関係に恵まれていない。



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