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未知夢

第12章 好機

「うちにあるのは、これが一番安いですよ。1200円です」


 主人が手に取った物を繁はマジマジと見る。


「鳴らしてみて」


「あ、はい」


 主人は時計の後ろにある小さなつまみをクルッと回す。


『ジリリリリリリリ……』


 列車の発車ベルのような音が、けたたましく店内に鳴り響く。


 主人が時計の上の黒く丸いボタンを押すと、音が止んだ。


「すげー、扱いなれてますね」


「まあ、商売なんで……こんな感じの音ですが……いかがですか?」


 繁はその時計をジッとみる。


「あの、色っぽい女の声で『繁ちゃん、いい子ね、朝よ、おっきして』と、やさしく言っ……」


「5800円です」


 主人は、最後まで言わせなかった。


「あ、あるのはあるんだね……」


 しばらく二人の沈黙が続く。


「あの、やっぱりこれは治りませんか?」


「廃棄処分した方が……」



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