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未知夢

第14章 滝繁

「じゃあ……まず、向こうにいる俺が、間違った事をする前に止めないと……」


〔未来をまた変えるのか?〕


「もう……変わってるはずだろ。俺はもう元には戻れないんだ。せめて事情を聞き出す」


 繁は大きく息を吸うと、森屋宅の玄関前まで足を進めた。


 右側には大きな庭が見える。


 自分との格の差を考えると虚しくなってくるが、息をグッと飲み、玄関の扉を開けた。


 あいにく鍵はかかっていなかった。



『カチャッ』


 繁はゆっくりと入って行った。


 中は広く、大きな2階への階段が龍の様にうねり立つ。


「これが社長になった者の家かよ……クソ!」


 繁は靴を脱ぐと、奥のリビングに向かった。


 明かりが付き、話し声が聞こえる。


 少し開いたドアの隙間から覗くと、もう一人の繁と森屋が酒と肴を前にして笑っていた。


 とても、この後に殺人事件が起こるような気配はなかった。



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