テキストサイズ

未知夢

第14章 滝繁

 洋風のリビングは約6帖ほどの広さで、ガラステーブルに黒いソファーが並ぶ。


 テーブルにはグラスが4つと焼酎、そしてサラミとチーズと柿ピーの乗った皿が1つあった。二人はテーブルを挟み、向き合いながら座っていた。


「そうそう、面白いことを教えてやる」


 森屋が銀紙に包まれたチーズを片手に、笑みを浮かべて言った。


「あぁ、なんだよ」


 繁はかなり酔っている様子だ。


「あんなぁ、あの高円寺綾っていたろ」


「あぁ、妊娠報道が出て、引退したんだ。さっきも話してたじゃねぇか」


 表情が不機嫌になった。思い出したくないようだ。


「妊娠させた相手って、報道されてないだろ……あれなぁ、俺なんだ」


 森屋はそう言うと、チーズをかじりながらクククっと笑った。


「なに!? また、くだらない嘘を……」


 本人の口からの真実。信じたくはなかった。


「本当に俺なんだ。嘘じゃない」


 繁の表情が変わる。目が据わり、森屋をギロッと睨み付ける。


「そんな顔するんじゃねぇって、付き合ってたんだよ。たまたま由佳里と結婚する前でさぁ、どっちに決めようかまよったんだけどよ……」


 森屋は得意げに言った。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ