テキストサイズ

未知夢

第14章 滝繁

「お前、親父がハゲてるだけでよく隠し子ってのがわかったな」


「頼むからチャチャるな……酔ってるから話がわからなくなる」


 森屋はテーブルにある新しいグラスを取ると、繁に差し出した。


「飲むか?」


 繁は軽く笑いながグラスを受け取る。


「まさか、お前と再び飲み会えるとはな。それに、もう話すのは嫌か?」


「どう言う意味だよ」


 森屋は顔をしかめる。


「酒で誘って話を変えるな。綾子さんの前で話すのは嫌なのか?」


「クソっ!!」


「待った! その態度は本当の理由を知らせてないんだな」


「関係ないだろ!! さっきからなんなんだいったい!! いい加減にしろよ!!」


 森屋は声を荒げ、テーブルを叩きながら立ち上がる。


「確かに関係ない。だが、俺がこいつを止めなかったらどうなっていたか……」


 繁は床に横たわる、もう一人の繁を指差した。


「俺がここに来た理由は2つある。1つは、こいつの犯行を止めに来た。もう1つはお前を守って、真実を聞きにきた。そしてもう1つは綾子さんの状況を確かめたかったんだ!!」


 理由が1つ増えていたことを、誰も咎めることはなかった。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ