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未知夢

第14章 滝繁

「お兄さん!! 大丈夫!!」


 脇腹を押さえる手が真っ赤に染まる。森屋は苦痛に顔を歪めていた。


「だ、大丈夫、傷は浅そうだ……いっ!!」


 汗がとめどなく溢れ出し、森屋の顔から流れ落ちる。


「いいんもいばか……してんじゃねぞお!! おんるぇみたいながいるかるぁ、おま……上に立てんだぉ!! かんさしろコわっ!!」


 酔いと怒りに興奮したのか、ろれつが回っていない。


 酒が入っていない繁は、あえて正しく発音してみた。


「いい思いばかりしてるんじゃないぞ!! 俺みたいなのがいるから、お前、上に立てるんだぞ!! 感謝しろコラ!! と、言ってるのか」


 繁は、その気持ちが理解できた。自分だからよけいにわかった。


「綾子さん、果物ナイフなんてどこにあったんですか?」


 暴れる繁を押さえながら、繁が聞いた。


「わかりません……でも、ここの端にある、BARカウンターに置いてあったかも……」


 繁は「えぇっ!?」と、後ろを向くと、お酒やグラスが並ぶ棚と冷蔵庫、それと立派なカウンターに丸椅子が置いてある。



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