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未知夢

第14章 滝繁

「えっ!? でも……」


「お前、タウン情報探すのにいつまでかかってんだ……いつ、病院に連絡するんだよ」


 森屋はそう言うと、血で汚れたシャツを捲り上げ脇腹の傷を確める。


 真っ赤になった左脇腹を指で押すと、まだ血が滲み出る。少しついた脂肪が多少カバーしてくれたようだ。


「く……まあまあ深いな……やっぱり病院だな。電話を貸せ、俺が自分でかける」


「警察には言わなくていいの?」


「それは……お前にまかす」


 綾子は唇を噛み締めた。信じられない出来事ではあった。だが、綾子はすべてを受け止めた。


 繁を信じていた。


 10年前、マンション屋上で急に現れた繁。


 すべてを助けてくれた。そんな恩人に何を言えよう。


 もう一人の繁には、兄を傷つけられた怒りもあった。


 だが、繁の本当の気持ちを綾子は知った。


 警察に連絡しようとした。だが、何度も警察署の番号を押しかけては指を止める。


 綾子は唇をキュッと結んだ。


「兄さん、私がどんな判断をしても絶対怒らないって約束して」


「わかった……だから、早く電話を貸せ!!」




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