テキストサイズ

未知夢

第14章 滝繁

 二人の繁は、タクシーの中にいた。


「すいません、酔いつぶれた双子の兄を送るんすよ」と、どうでもいい説明を付けながら京都から大阪に戻る。


 この世界の繁はグッタリとしている。しばらく目を覚ましそうにない。


 100万残してよかった。これならタクシーでも余裕だ。


〔時間の旅はどうだった?〕


 心の声だ。


 ここで、口に出して話すと独り言だと思われる。


 頭の中で会話を試みた。


(誰も死ななくてよかった)


 だが……


 反応がない。


 限りなく小さい超小声で話してみた。


「誰も死ななくてよかった」


〔えっ!? なんて? 聞こえない〕


「ふざけんなコラっ!!」


 まあまあギリギリの辺りのボリュームで話す。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ